2024.12.02 お役立ち情報
住宅ローンの繰り上げ返済とは?得するタイミングをシミュレーションで検証
この記事では、住宅ローンの繰り上げ返済について解説します。
住宅ローンを利用すると、最長35年間にわたり毎月一定額の返済を続けることになります。その支払期間や返済額を抑える方法の1つが”繰り上げ返済”です。
この記事では、住宅ローンの繰り上げの概要やメリット・デメリットを解説します。繰り上げ返済をするべき・避けるべきタイミングについてもお伝えするので、住宅ローンの借り入れを検討している人や返済中の人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 住宅ローンの繰り上げ返済とは
- 住宅ローンの繰り上げ返済を行うメリット・デメリット
- 返済期間短縮型と返済額軽減型の繰り上げ返済はどちらが良いのか
- 住宅ローン控除と繰り上げ返済で得する金額をシミュレーション
- 住宅ローンで繰り上げ返済を行うべき・避けるべきタイミング
- 住宅ローンで繰り上げ返済を検討するときの注意点
目次
住宅ローンの繰り上げ返済とは
繰り上げ返済とは、毎月のローン返済とは別にまとまった自己資金を元金の返済に充てることを指します。
繰り上げ返済をすれば借り入れた元金を減らせるので、利息を抑えたり、毎月の返済額を減らしたりすることが可能です。
繰り上げ返済は早い段階で行うほうが良いといわれることがありますが、これは元金を早めに減らして利息の支払いを抑えたり、将来的に金利が上昇したときのリスクを抑えたりできるためといえます。
ここでは、繰り上げ返済の方法として以下2種類を解説します。
- 返済期間短縮型
- 返済額軽減型
それぞれ見ていきましょう。
「返済期間短縮型」とは
返済期間短縮型とは、残りの返済期間を短くする繰り上げ返済の方法です。毎月の返済額は変わりませんが、返済額軽減型より利息の軽減効果が大きく、多くの人が利用する返済方法といえます。
返済期間短縮型の繰り上げ返済が向いている人の特徴は以下の通りです。
- 定年前に返済を終えたい人
- 老後の生活資金を蓄えたい人
- 住宅を貸すことを検討している人
- 高い金利で借りている人
定年後もローンの返済が続く予定なら、できるだけ早めに返済を終えることで、老後の生活にもゆとりが生まれます。また、住宅ローンを払っている住宅を賃貸に出して新しい住まいに住み替えしたい人やローンの金利が高い人なども、返済期間短縮型の繰り上げ返済が適しているでしょう。
なお、返済額が少ないと期間が短縮されないことがあります。いくら繰り上げ返済すればどれくらい短くなるか、借り入れした金融機関に確認しましょう。
「返済額軽減型」とは
返済額軽減型とは、毎月の返済額を抑える繰り上げ返済の方法です。返済期間は変わりませんが、繰り上げ返済をした翌月の返済額が少なくなるため、効果を実感しやすい方法といえます。
返済額軽減型の繰り上げ返済が向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 赤字などで家計を見直したい人
- 転職などで収入が一時的に減る人
- 教育費などで出費が増える人
家計を見直したい人や転職・産休などで収入が一時的に減ると予測される人、また、教育費などで出費が増えると見込まれる人などが利用するケースが多いといえます。
利息の軽減効果は返済期間短縮型より少ないといわれますが、住宅ローンの返済では滞りなく返済を続けることが必須であるため、無理なく支払える範囲で返済を続けるために返済額軽減型を選ぶことも方法の1つです。
住宅ローンの繰り上げ返済を行うメリット
ここでは、住宅ローンの繰り上げ返済を行うメリットを見ていきましょう。
- 返済期間短縮型のメリット
- 返済額軽減型のメリット
上記2点を順番に解説します。
返済期間短縮型のメリット
返済期間短縮型の主なメリットは以下2点です。
- 支払利息を削減できる
- 完済時期を早められる
元利均等返済では、ローンが開始された当初において利息が返済額に占める割合が最も多く、返済が進むにつれて減少します。つまり、繰り上げ返済する場合は、早めに行ったほうが同じ金額でも利息を減らせる効果がより高いといえます。
返済期間を短縮することで完済時期を前倒しにできるため、定年までに住宅ローンを完済したい人には期間短縮型がおすすめです。
返済額軽減型のメリット
返済額軽減型のメリットには、以下3点が挙げられます。
- 月々のローン支払額が抑えられる
- 他の投資や支出に充てる資金を確保しやすくなる
- 与信枠の回復効果を得られる
返済期間は変わりませんが、繰り上げ返済で元本を減少させるので月々の返済額を減らせます。
毎月のやりくりに余裕が生まれ、他の投資や支出に充てる資金を確保しやすくなるでしょう。
なお、返済額軽減型には、与信枠の回復効果という期間短縮型にはないメリットがあります。与信枠とは、融資の限度額のことです。
月々の支払額が少なくなるため、返済比率が下がり新しいローンを借りやすくなります。
住宅ローンの繰り上げ返済を行うデメリット
繰り上げ返済には、メリットの一方でデメリットも存在します。
- 返済期間短縮型のデメリット
- 返済額軽減型のデメリット
上記2点を見ていきましょう。
返済期間短縮型のデメリット
返済期間短縮型の主なデメリットは以下の通りです。
- 手元資金が減少する
- 繰り上げ返済額が少ないと効果が低い
- 住宅ローン控除が適用できなくなるおそれがある
- 金利が低い場合は利息軽減効果が小さいことがある
期間短縮型でまとまった資金を返済に充てる場合、手元資金が減少する点がデメリットとなります。急に大きな出費が必要になった際、資金面で困ることがあるでしょう。
また、住宅ローンでは利息の支払いが長く続いて総返済額が高くなることがあります。そのため、繰り上げ返済額が少なく返済期間が変わらないケースでは、効果が低い点もデメリットとして挙げられます。
加えて、繰り上げ返済して返済期間が10年以下になる場合、10年以上の返済期間を要件とする住宅ローン控除が適用できないおそれがあります。
税務署に確認してから繰り上げ返済を実行すると安心です。
返済額軽減型のデメリット
返済額軽減型のデメリットは以下のとおりです。
- 返済期間が変わらないので住宅ローンのプレッシャーが続く
- 返済総額が期間短縮型よりも多くなる
返済期間は借入当初と変わらないため、住宅ローンのプレッシャーが長く続くことになります。
また、返済額軽減型では大幅な利息カットは望めないため、返済総額は期間短縮型より多くなる点もデメリットです。
返済期間短縮型と返済額軽減型の繰り上げ返済はどちらが良いのか
返済期間短縮型と返済額軽減型のどちらが良いのかは、家計の状況や目的によって異なります。
今後、子どもが生まれたり教育費が増加したりする場合には、毎月の返済額を減らせる返済額軽減型を選ぶと、安定した返済を続けやすくなります。
一方で、定年前にローンの返済を終わらせたい人には、返済期間短縮型が適しているといえます。退職時に退職金をローン返済に充ててしまうと、老後資金が不足する場合があるでしょう。
どちらが良いのかは各家庭のケースによって異なるため、ファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談すると安心です。
住宅ローン控除と繰り上げ返済で得する金額をシミュレーション
ここでは、住宅ローン控除とあわせて得する金額がどの程度になるのか、シミュレーションで見ていきましょう。以下の条件で算出します。
【条件】
● 借入金額:2,000万円 ● 返済期間:35年 ● 固定金利:1.3%(元利均等返済) ● 返済済み年数:5年 ● 繰り上げ返済額:200万円 |
上記の条件の場合、削減できる利息と短縮できる期間は以下のとおりです。
返済期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
削減できる利息 | 87万4,900円 | 41万5,169円 |
返済期間 | 26年 | 30年 |
毎月の返済額 | 5万9,296円 | 5万2,569円 |
※参考:【しっかり】繰り上げ返済シミュレーション ─ 今すぐシミュレーションしてみよう! ─ 資金プランシミュレーション丨金融広報中央委員会
シミュレーションの結果、返済期間短縮型を選んだ場合は削減できる利息が返済額軽減型の2倍程度になりました。返済期間も4年短くなっています。
一方、返済額軽減型を選んだ場合は、毎月の返済額が当初より6,727円少なくなりました。
住宅ローンで繰り上げ返済を行うべき・避けるべきタイミング
ここでは、繰り上げ決済のタイミングについて以下2点から解説します。
- 行うべきタイミング
- 避けるべきタイミング
それぞれ見ていきましょう。
行うべきタイミング
繰り上げ返済を行うべきタイミングとして、以下3点が挙げられます。
- 住宅ローン控除期間が終了したとき
- 子どもの教育費などのライフイベントの資金を用意できたとき
- 金利が上がったとき(変動金利で借入の場合)
住宅ローン控除の控除率は0.7%(2024年11月現在)です。住宅ローン金利が0.7%以下で控除の期間内であれば、繰り上げ返済ではなく住宅ローン控除を受けるほうがお得といえます。
子どもの教育費などのライフイベントの資金を用意できた場合も、繰り上げ返済のタイミングといえます。住宅ローンは教育ローンなどより利率が低いため、まずは教育費などを確保してから返済しましょう。
変動金利や当初固定金利型の住宅ローンでは、繰り上げ返済で得をしやすいといえます。変
動金利で借入をしていると、金利が上がった際の返済負担が重くなるため、金利が上がるタイミングで繰り上げ返済をして月々の返済額を抑えることが有効です。
※参考:住宅ローン減税の借入限度額及び床面積要件の維持(所得税・個人住民税)丨国土交通省
避けるべきタイミング
繰り上げ返済を避けるべきタイミングは以下の通りです。
- 資金に余裕がないとき
- 金利が低いとき
- 住宅ローン控除を受けているとき
繰り上げ返済はまとまった資金を返済するため、手元にあるお金が少なくなってしまいます。急な出費が発生すると対応できなくなってしまうので、資金に余裕がないときは避けましょう。
また、金利が低いときはそのまま返済を続けたほうが、安定した家計を保ちやすくなります。住宅ローン控除を受けているときは所得税を減税できるため、控除期間が終了してから繰り上げ返済するほうがお得です。
住宅ローンで繰り上げ返済を検討するときの注意点
ここでは、住宅ローンの繰り上げ返済を検討するときの注意点を見ていきましょう。
- 繰り上げ返済は手数料がかかる
- 団体信用生命保険(団信)の保証に影響が出ることもある
- 緊急用の手元資金が減少する
- ローンの借り換えも選択肢の1つである
上記4点をそれぞれ解説します。
繰り上げ返済は手数料がかかる
繰り上げ返済はこまめに実行すると良いともいわれますが、金融機関によっては1回あたり数万円の手数料がかかる場合があります。
ネット銀行の中には無料で繰り上げ返済ができるところもありますが、それ以外では手数料を高く設定しているところもあるので、実行する前に確認しておきましょう。
団体信用生命保険(団信)の保証に影響が出ることもある
住宅ローンを利用する人は、ほとんどのケースで団体信用生命保険(団信)に加入します。繰り上げ返済をすると団信の満期が早まり、返済が終わった段階で保証期間が終了します。
返済終了後に契約者が亡くなったり重度障害になったりした場合、団信から保険金は支払われないため、契約者が重篤の場合には繰り上げ返済を控えたほうが良いでしょう。
緊急用の手元資金が減少する
繰り上げ返済をする際にはまとまった資金を返済に充てるため、緊急用の手元資金が少なくなります。
繰り上げ返済を行った後に、予期せぬ転職や出産などで収入が減ることが考えられます。万が一の事態が発生しても対応できるよう、一定の資金は残しておきましょう。
ローンの借り換えも選択肢の1つである
利息を減らす方法として挙げられるのが、住宅ローンの借り換えです。現在借りているローンを一括返済するために、新たにローンを借り入れます。
借り換えのメリットは以下のとおりです。
- ローンの総返済額を減らせる
- 月々の返済負担が軽くなる
- 返済期間を短縮できる
借り換えによって金利が下がれば、利息の負担が減るのでローンの総返済額を抑えられます。月々の返済負担を軽減でき、早めに返済を終わらせたい場合におすすめです。
ただし、借り換えの際には審査を行う必要があり、必ず借入できるとは限りません。
住宅ローンの繰り上げ返済に関するよくある質問
ここでは、住宅ローンの繰り上げ返済に関するよくある質問に回答します。
- 住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない大きな理由は?
- 住宅ローンの繰り上げ返済で少し残すのはあり?
上記2つの質問をそれぞれ見ていきましょう。
住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない大きな理由は?
住宅ローンを繰り上げ返済してはいけないといわれる理由には、主に以下の2点が挙げられます。
- 大きな支出が発生した場合に家計のやりくりが困難になる
- 住宅ローン控除の控除額が減ってしまう
ただし、資金的に余裕がある場合や住宅ローン控除期間が終了した場合は、繰り上げ返済によりメリットを得られるため、必ずしもNGとはいえません。
住宅ローンの繰り上げ返済で少し残すのはあり?
住宅ローンの繰り上げ返済をする際は、手持ちの資金を全て充てるのではなく最低限の貯金を残しておくことがおすすめです。万が一、病気になって働けなくなったり転職などで収入が減少したりした際に対応できる資金が必要です。
住宅ローンは他のローンより利率が低いため、新たに借入をしなくても済むように余剰資金を確保しておきましょう。
住宅ローンの繰り上げ返済は得するタイミングを見極めて後悔をなくそう
この記事では、住宅ローンの繰り上げ返済について解説しました。
ボーナスなどでまとまった資金が手に入った際に繰り上げ返済を活用すると、ローンの総返済額を減らしたり、返済期間を短縮したりするなどの効果が見込めます。ただし、資金に余裕がないときに無理して返済すると、不測の事態が発生した際に金銭的に困るおそれがあります。
住宅ローンの繰り上げ返済を実行する場合は、タイミングを見極めて慎重に行うことがおすすめです。
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